日刊スポーツ

上村は銅メダルだと思った。滑りがきれいだったし、スピードも速かったからだ。ところが、表彰台に滑り込んだのはカーニーだった。 モーグルは採点競技で、ターン、エア、スピードで争われる。最も重視されるのはターン点で合計30点満点のうち50%の15点。エアとスピードは各25%で7・5点が満点になる。派手なエアに目が行きがちだが、最も大切なのはターン。こぶを巧みに滑る技術を争うのが、この競技なのだ。 上村とカーニーの得点を比べてみた。スピードは上村がカーニーを上回っていた。エアはカーニーが上村を引き離している。そして、最も重要なターン。審判はいずれもカーニーを上としている。上村はターンで劣っていたのだ。 上村のターンは、世界でもトップレベルと言われている。スキーのエッジで確実に雪面をとらえ、こぶをクリアしていく。「カービング」の技術だ。しかし、10年バンクーバー五輪前に採点基準が見直され、スキーを横に滑らせることへの減点が緩和された。 雪面を受ける力をすべて受け止める上村に対して、カーニーやデュフールラポワントはスキーのテールを小さくずらしながら、雪面に逆らわずに滑った。以前なら減点となった滑りが、高得点を生んだのだ。